★芹野 敬

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− ポップスを歌う −
 どこまでものびゆくその声の音域は広い。
 低音で響かせながら、ささやくように歌う声は、お腹にズンとくる。
 そして、高音は頬をひっぱたかれるほどのパンチがある。
 その歌声にはドラマがある。


大切なうた   

 
「桃     Noriyuki M」 


抱きしめることは簡単なこと。
でも、人間はそんな簡単なことが出来ない。

心を「ギュッ」と抱けることの大切さと、
心を「ギュッ」と気付かないままに握ってしまい、与えてしまう痛みを、
「桃」の甘さと苦味にとかして教えてくれたうた。


大好きな田舎のおばあちゃんは、
夏になると「桃」を水道水にさらして冷たくして待っていてくれました。

傷付きやすいその果実は、
彼女がずっと待っている間も一緒に甘い香りを放っています。

でも、子供がいつまで経ってもやって来ない時、
待ちぼうけと共に、それは傷付き、
そして時間と共に茶色く濁ってしまいます。


人の心は、誰もがその「桃」のようにやわらかいはず。

一人では自分だけでは思うことのないことも、
相手がいると、その相手を考えることでまた違った心も出てきます。

でも、自分勝手な思いで強く力を入れられてしまうと、
知らないうちに痛みが増してしまいます。
それでも、
茶色くなってもほのかな香りをもって待っていてくれる彼女のように、
いつかなりたい…。

そして、桃を、「桃」を、味わう喜びを、
私も聴いてくださる人に渡したい。

季節感のなくなったこの頃、
果実はいつでも手に入れられるものになりましたが、
桃は、夏以外には入手困難な果物です。

「桃」がお店に並ぶ頃、
そして今年も待っていてくれるだろうおばあちゃんは、
皴を刻み、深く刻んだ皺が横に流れると、やさしい笑顔が表れる。


          一人では感じられなかった気持ちが
          僕の中で実る
          君の言葉で実る

安心をいっぱいくれたおばあちゃんの笑顔を連れて、
「桃」を尋ねに行こう…。